URUSHI
◯漆皮とは

漆は、強靭さ・抗菌性・修復性・美しさなど総合的観点で現代の化学をもってしてもこれより優れた塗料は存在しないとされている天然塗料です。
身近では、陶器などよりも雑味が混ざりにくい性質から和食割烹の椀物に用いられ、出汁の旨味や味付けなどをダイレクトに楽しむ器として重宝され、またその美しさから家庭では正月お節料理の華やかさを引き立てる道具として使われています。
その漆を牛や鹿・猪など動物の皮を成形した後に漆を塗り重ねて硬く仕上げる日本の伝統技法を“漆皮”と言います。

漆の技術自体は縄文時代から存在していたと言われ、漆皮技法は飛鳥時代に大陸から伝わり確立した後、奈良時代には最盛期を迎えます。現在でも正倉院の宝物に現存する漆皮箱が数点残っています。
平安時代には木工技術が伝わってきた事から、徐々に下地が皮から木地へと移行していき現代ではあまり目にする事がなくなった技法となっています。

その漆皮を独学にて何年も研究試作を重ねて、ようやく革モノとして形にできるようになったのがこのシリーズになります。

漆を4〜5行程塗り重ねて質感を出した新しいレザーグッズ。
各工程毎に乾燥工程が入りますが、漆は常温では乾かない為、温度20度(最適25度前後)・湿度60%(最適75〜85%)以上を保った風呂(または“室(むろ)”)という箱の中に入れて1日乾燥させます。
器として漆塗りを施していく場合には、更に工程を繰り返し漆を重ねて強靭さを増していきますが、バッグや革小物では柔軟性を残した上で“塗り”を表現しています。
◯表現への想い
「人がやらない事をやってみたい。私にしか出来ないモノをつくりたい。」
そんな想いで20年以上ものづくりをしてきました。
思えば道を決める時も、この発想が影響していたと思います。___洋服の世界から革の世界に行くと決めた時。___同じ物をたくさん作る事が嫌で、拘った一点物の手縫い鞄の技術を身に付けると決めた時。
___革のモノを追究していく中でも、良い素材への探求、仕立て技術の鍛錬、素材の加工など様々な手を運び歩みを進めてきて、ある時ふと繋がった“革と漆”という組み合わせ。
ファッション、アート、建築、古物、音楽など様々な“私”を構成する要素の中から繋がった一本の線が見えたような感覚でした。
この感覚を何年も大切に磨いては失敗し、また磨いていく事を繰り返して形になってきたモノたち。

月並みに「これはアートです。」という胡散臭い言葉として伝わってほしくはないのですが、この作品たちを“私なりの芸術”として共感して頂ける方が少しでも増えてくれたら望外の幸せでございます。